「気持ちいい」に、貪欲に

vol.3 男友達にセフレになってもらい、 性のリハビリに付き合ってもらった話 〜信頼でつながるセックス〜

vol.3 男友達にセフレになってもらい、 性のリハビリに付き合ってもらった話 〜信頼でつながるセックス〜

思い返すだけで下半身が疼くアツい夜や、微笑んでしまうほど愛に溢れたセックス、はたまた「奇妙だったな〜」と笑っちゃうプレイ、経験ありませんか?さまざまなセックスの記憶を綴っていく、リレー連載です。
今回は、桃子さんが救われた「セックスのリハビリ」のお話。

セックスができなくなったことがある。誰と寝てもダメでもう一生できないのではないかと諦めかけていたある日、セックスを取り戻させてくれたのは男友達の言葉だった。

「お前とのセックス、俺の人生で最悪だったわ」

ある日、私は打ちひしがれていた。

好きでもない男と飲んでなりゆきのセックスをしてしまったのが悪かった。汗と酒の匂いにまみれて局部をこすりつけ合うようなしょっぱいセックス

いつもより声を大きく上げて、自分から腰を振ってみたりもするが、全然良くない。酔いも興もすっかり醒めきっていたが、とてもじゃないけれどシラフで突っ切れるような空気ではなかった。相手が果てたのを確認して、こっそり小さく胸を撫でおろして大げさに「あ~、気持ち良かったぁ~」と言った。これで眠ってしまえば朝で、私は何事もなく帰還できる。ここまで、私の演技は完璧だった。

しかし、相手は気づいていたようだった。きっと自分が傷つくのが怖かったのだろう。私が眠ろうとしてベッドに足を通した瞬間に我先にという感じで、こう言った。

「こう言っちゃなんだけどさ、お前とのセックス、俺の人生で最悪だったわ」

頭に金鍋が、あるいは鈍器が、落ちてくるような衝撃を受けた。「こっちのセリフだ」と言い返してやりたかったが、何だか私が悪いような気がした。「お前とのセックス最悪だったわ」という相手の言葉と、いつもより大げさに喘いだ自分の滑稽な姿が重なって圧倒的な無力感に苛まれる。

あろうことか、そいつはスッと立って服を着始めた。情景を目に写すことはできても、頭がついていかない。そうこうしている間に、その男はカバンを持ち、上着を着て、ドアの外に出て行ってしまった。

ホテルにぽつりと取り残された惨めな私。かくして私は打ちひしがれていた。その日以来、セックスができなくなってしまったのだった

ラッキー。この人でリハビリしよう

でも、私は諦めていなかった。どうすればいいかはわからない。でも、諦めてはいない。チャンスが降りてくるのを虎視眈々と待った。

ある日、男友達のKとお茶していたときのことだ。Kとは2年くらい前に何かの飲み会で知り合って以来、何かの用事でお互いの家の近くに来たときに連絡してお茶をしたり飲みに行ったりする仲だ。顔は悪くないし、話せば楽しい。ただ、Kは出会った当初からずっと同じ彼女と付き合っていて、最初から自ずと恋愛対象からは外れていた。

いつものように何でもないような話をしてカフェを出て手を振って帰ろうとしたとき、言いにくそうに渋い顔をしてKが切り出してきた。

「実はさ、俺、彼女と別れたんだよね」

仲の良い友達であれば、「え、大丈夫?」と言ってあげるべきだったのかもしれない。しかし、私の脳裏に浮かんだ言葉。それは「ラッキー」だった。

この人がいいんじゃないか。この人となら信頼関係ができているし、またセックスができるようになるかもしれない。そう決意してからは早かった。

「ねぇ、私をセフレにするっていうの、どう?」

時が止まる。そう言ってしまってから、私はようやく後悔した。傷心している友達を慰める前に自分をセフレにしろだなんてやっぱり最悪だったかもしれない。

黙ってこちらを見据えるKの明らかに驚いた顔を見て、「ごめん、やっぱり…」と口ごもると、Kはおかしそうに笑いながらこう言った。

「いいけど、言い方なんかもっとないの?」

そう言って、Kは私の手をパッと取って、渋谷の道玄坂をホテル街に向かって歩き始めた。自分で言い出したとは言え、ドキドキしてしまう。いつも見ているKよりも心なしか色っぽく見えた。

信頼関係で、セックスは良くしていける

Kに続いて入ったのは、小さなホテルだった。ビルとビルの隙間ほどしかない狭い入り口を抜けて通された部屋もまた、ひとがひとり通れるだけの狭い隙間しかない。ヤるための部屋だな、とKは言ったけれど、本当にそうだなと思った。

勢いで来てしまったけれど、酔ってもいないのできっかけがつかめない。「せっかく来たし」と言いながらKが脱ぎだすので、私もいそいそと服を脱いだ。結果は案の定、最悪だった。ムードもへったくれもあったものではなく、緊張でガチガチになった私の身体にKも気づいていたようだった。この光景、デジャヴ。私は泣きそうになりながら、小さな声で「ごめん」と謝った。すると、Kはこう言った。

「謝ることじゃないよ。セックスはふたりでするものだし、俺たち今日が初めてじゃん。あと2~3回試してみてもいいんじゃないかな?桃子はどんな体位が好きなの?」

「今日は何食べたい?」のノリで好きな体位について聞いてくるKがおかしく、だけど同時に救われもした。そういえば、私はいつも男性に合わせてばかりいた。自分の意思なんて、聞かれたことがなかった。

「うーん…バック?」
「そうなの?2年間よく会ってたのに、知らなかったわ」

そう言ってKは笑い、つられて私も笑った。

その後にトライした第2ラウンドはバックで、Kが後ろから私を激しめに突いた。セックスの最中には何度も、もっと激しくが良いか、もっとやさしくが良いかと、Kは何度も私に訊ねてきた。私はそれどころではないくらいに気持ち良くて、気づけば「怖い」という感覚は消えていた。私はこのとき、もともと持っていた以上に、セックスをすっかり取り戻したのだった。

それから私たちはカフェや飲み屋に行く感覚でときどき会ってはセックスをした。1回目よりも2回目が良かったように、回を重ねるごとに私たちの相性は良くなっていった。セックスが信頼関係で良くなることを、私はこのとき初めて知ったのだった

***

そうやって逢引きを重ねて3ヵ月くらい経ったころだろうか。Kにカフェに呼び出されて「好きな人ができて、付き合おうことになったんだ」と言われた。「そっか、おめでとう」と言ったと思う。でも、うまく笑えているかは自信がなかった。

カフェを出て、Kに手を振り、背中が見えなくなるまで見届ける。好きなわけではなかったと思う。でも、部屋が急に広くなった感じがして、急に寂しくなったのは確かだ。

あれからKには会っていない。だけど、誰かと初めてするとき、Kの言葉を思い出す。信頼関係でセックスは良くすることができる。それはKが私に教えてくれたことだ

桃子

プロフィール

桃子

お酒とセックスをこよなく愛する、SとMとのスイッチャー。